手番ですよ。

2016年11月18日

第51回「『エッセンシュピール2016』で今年のゲームシーンに触れる!」

 
エッセンシュピールレポート!!!

みなさま、お久しぶりです!
久しくお休みをいただいておりました「手番ですよ。」、特別篇として復活です。
今回の特別篇では、先月、10月13日から 16日までの四日間、ドイツはエッセン市で開催された世界最大級のボードゲームイベント「Essen Spiel 2016」(エッセンシュピール2016以下、シュピール)のレポートをお送りいたします。




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今年もやってきましたエッセンシュピール!





50を超える国や地域から 1,000に及ぶ団体が出展し、来場者は過去最高の 17万人以上を記録した一大イベントだけに、ドイツをはじめとしたヨーロッパのみならず、世界のボードゲームシーンの「今」が一堂に会していると言っても過言ではないでしょう。
今回のレポートでは、「シュピール」開催の前日に開かれたカンファレンスで語られたトピックを中心に、会場の模様をお伝えしていきたいと思います。

「シュピール」は、毎年、木曜日から日曜日までの 4日間にわたって開催されるのですが、開催の前日、水曜日にプレス向けのカンファレンスが開かれ、その年の動向等が紹介されます。
そのカンファレンスで、今年触れられた主なトピックとしては、「脱出ゲームの流行とボードゲーム化」、「ギミックなどを用いてフィジカルに訴えかける魅力を持ったゲーム」、「ゲームの大型化」というところ。個人的には、近年、周辺諸国のゲームシーンの盛り上がりと比べると少し弱く、多くのカードテキストや派手なゲーム展開を持ったアメリカンなゲームに押されていた感のある「(王道的な)ドイツゲーム」について、「復権の兆し」と触れられていたことに注目したいところですが、まだ、触れかたとしては小さく、これは来年以降に期待したいところです。

さて、では、それぞれのトピックについて、実際のところはどうだったのでしょうか。

まず、「脱出ゲームの流行とボードゲーム化」。日本でもお馴染みの「脱出ゲーム」。実は、ヨーロッパでも「脱出ゲーム」はある種、ブームとなっており、それなりに大きい都市であれば、いつでも脱出ゲームが楽しめる常設の脱出ゲームが一つや二つ、あってもおかしくないのです。(「シュピール」が開催されるエッセン市にも、それほど大きくない地方都市でありながら、常設の脱出ゲームがあります)
その人気を受け、ドイツの大手出版社「KOSMOS」(コスモス社)をはじめ、複数の出版社が発売、プロモーションを展開していました。
「脱出ゲーム」自体の説明はここでは省略させていただきますが、いくらブームとは言え、「脱出ゲーム」に共通する「謎や仕掛けがわかってしまうともう楽しめない」、すなわち「一度しか遊べない」脱出ゲームをどうボードゲームに落とし込んでいるのか、は非常に興味のあるところです。
というわけで、いくつかのブースを訪れてみたのですが、会場にちょっとした「脱出ルーム」を設けお客様に挑戦してもらうという「脱出ゲーム自体が持つ魅力」を紹介するような形が目立ち、商品内容の紹介はそれほどでもないという印象でした。さきほど触れたように「脱出ゲーム」は、その性質上、内容に触れてしまうと、いわゆる「バレ」になってしまい、ゲームとしての魅力を大きく損なうことになるため、各出版社とも自社の商品内容に直接触れることなくプロモーションを行わざるを得ない、ということもあってのことの苦肉の策、というところだったのかもしれません。
しかし、一方で、「Pandemic Legacy」(パンデミック レガシー)、「T.I.M.E Stories」(タイム ストーリーズ)といった、すでに発売済みの「一度しか遊べない」タイトルが大ヒットしていることもあってか、各出版社とも商品自体には自信をうかがわせていました。
日本人としては「ドイツ語や英語がわからなくても遊べるのか」というのも気になるところだったのですが、出版社の方に尋ねたところ、これには「難しいと思う」との返答。実際に楽しむことは難しくとも、今年の「シュピール」を彩ったトピックのひとつとして、今後の動向には注目していきたいところです。




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会場に作られた「脱出部屋」。肝心の部屋の中が紹介できないのがもどかしい。





続いては、「ギミックなどを用いてフィジカルに訴えかける魅力を持ったゲーム」を見ていきましょう。
カンファレンスで、このトピックが取り上げられたとき、私は正直、意外に感じられました。というのも、ドイツゲームにはもともとすぐれたギミックとアイデアを持った作品はこれまでも多く発表あれており、「脱出ゲーム」ほどの目新しさが感じられなかったからです。
しかし、その印象も、実際に会場を巡ってみると一変させられました。とにかく多い!のです。そして、そのアイデアの幅広さにも驚かされました。
実際に、会場で見かけたものを挙げていってみましょう。
まず、クラウドファンディングを募った際から話題となり、カンファレンスでも真っ先に名前の挙がっていた台湾発の「The Perfumer」(パフューマー)。そのタイトル通り「香水」をテーマにしているだけに、「匂い」を実際にゲームに取り入れたという驚きの一作。幸いにもデモプレイで遊ぶことができたのですが、単にインパクトを狙っての「匂い」要素の採用になっておらず、得点要素として「匂い当て」活かされていたことにはさらに驚かされました。日本のファンとしては、12月に開催される「ゲームマーケット 2016 秋」において、メーカーによる販売計画があるというのも嬉しいところ。




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「A GAME OF REAL FRAGRANCE」(ゲーム オブ リアル フレグランス)のサブタイトルもインパクト大





同じくアジアは韓国から登場の「Fold It」は、「お題と同じものをいかに早く作るか」という、よくあるパズルライクなゲームではあるのですが、使うのがさまざまな食べ物が描かれた「布」というのが新しいところ。この布をうまく畳むことでお題と同じものを作らなければならないのです。新鮮なアイデアとルールのわかりやすさとがあいまっての楽しさや、明るくポップな図柄などから会場でも人気が高く、実際、用意分は初日で完売となったようです。
はからずもアジア発のゲームを二つ続けて紹介することになりましたが、本国ドイツのメーカーも負けてはいません。Queen Games(クイーンゲームズ)の協力ゲーム「
Geisterburg
」(オバケの城)は、目隠しをした親に指示を出し、親の持つ魔法の杖(棒)をボード上でうまく誘導し、宝を取ることを目指します。目隠しをしていることによるたどたどしさに加え、目隠しとしてつける「お面」のバカバカしいイラストが合わさり、愉快なファミリーゲームとして子供も含め、多くの人が遊んでいました。




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お面のバカバカしさがなんとも魅力的





そして、この手のゲームにおいてこの人ありのRoberto Fraga(ロベルト・フラガ)も、潜水艦同士の戦いを描いた大きなスケールのチーム戦ゲーム「Captain Sonar」(キャプテンソナー)、Pegasus Spiele(ペガサス社)によるドイツ語版発売が決まった昨年のヒット作「Dr Eureka」(ドクターエウレカ)など、例年以上の活躍がみられ、大いに注目を集めていました。
そのほか、「おきあがりこぼし」のような駒を指ではじく「アイスクール」は、そのおもりによる絶妙な動きには、プレイヤーのみならず、周りのギャラリーも巻き込んで盛り上がっている光景が印象的でした。
ざっと紹介しましたが、もちろん、これはあくまでごくごく一部。とにかく、今年の充実ぶりには驚かされるばかりでした。

そして、「ゲームの大型化」。
カンファレンスでも真っ先に名前の挙げられていた「Ein Fest fur Odin」(オーディンの祝祭)は、3kgを超えるという重さ、箱の厚みは約12cmという、圧倒的なインパクト。カンファレンスでも、このトピックの際に、まっさきに名前が挙げられていたのも納得です。ゲームの大型化のはしりとなった一作と言っていいUwe Rosenberg(ウヴェ・ローゼンベルク)の最新作ということもあり、開催前からすでに話題になっており、メーカーブースでのデモプレイの予約もすぐに埋まっていた様子。デモプレイでは、少し内容を省略した形、かつ時間を一定時間で区切って行われていたようですが、それでもこれだけの時間のかかるビッグゲームを会場で遊ぶというのは、気合が入っているというか、なんというか。ちなみに、会場で行われている人気投票「スカウトアクション」で一位を獲得。私のテンデイズゲームズからすでに日本語版が発売されていることもあり、私もすでに遊んだのですが、その面白さも大きさ、重さに負けていません。面白さの面でも大注目のタイトルと言えるでしょう。
続いては、8月に開催されたアメリカのゲームコンベンション「GEN-CON」でも大きな注目を集めていた「SeaFall」(シーフォール)。その「シーフォール」は「シュピール」でも大人気。ゲームをプレイするたびにさまざま要素が加えられ、その後のゲームシステム自体が変わっていくという「レガシー」システムを採用したビッグゲームだけに、遊ぶのはなかなか大変そうですが、デモブースの壁に「ここでは販売していません!」という旨の張り紙がデカデカと貼られていたところをみると、多くの来場者が買い求めに訪れていた模様。
ミニチュアを内容物に含んでいることも少なくない大型ゲームは、アメリカのメーカーによって制作され、クラウドファンディングによる資金調達と販売が行われることが多く、そういったタイトルは「シュピール」会場ではどうしても影が薄くなりがちなのですが、それでも存在感は大きく、なかでも「Scythe」(大鎌戦役)は、すでに発売済みということもあってか頭一つ抜けた存在感を放っており、会場でも注目を集めていました。
それにしても、これだけ重く、パッケージの大きなゲームを会場で買って持ち歩き、その後、家に持って帰るのはなかなか大変なもの。それでも多くのファンが買い求めるわけですから、その熱意たるや、驚かされます。かくいう私もその一人ではあるのですが。




日本発ゲーム「ヤポンブランド」

過去最大規模となった今回の「シュピール」。日本人としては、日本発のゲームを精力的に紹介し続けるゲームデザイナーの集まりである「ヤポンブランド」が、これまでで最大規模の規模となったことにも触れないわけにはいきません。
これまではそれほど大きなブースだったこともあり、そこかしこに手作り感、同人感も感じられたヤポンブランドのブースですが、今年は、昨年までのさらに倍、出展をはじめた当初から比べると4倍という規模。作品数も二十数作に及び、貫録を感じさせるものになってきました。
AMIGO(アミーゴ社)からも作品を発表している川崎さんの諸作や、「ラブレター」、「街コロ」といった大ヒット作がヤポンブランドを引っ張ってきたことは間違いないところではありまっすが、今年の雰囲気を見るに、完全に日本発のゲームはその人気を確立したといってもいいかもしれません。
事実、アメリカのメーカーによる英語版制作のクラウドファンディングの大成功が大きな話題となった OKAZUブランド作品はもちろんのこと、VRを取り入れた独特のプレイ感が魅力の「アニュビスの仮面」(公式サイト)、日本においてもその存在は唯一無二といっていい「浄土双六」をはじめ、多くの作品が完売になっていたのが印象的でした。
また、これまでは日本国内で発表したのちに「シュピール」で販売されるという流れが主だったのですが、今年は「シュピール」が初お披露目となる作品もあり、これからは「シュピール」で発表し、その話題性をもって日本で発売する、なんていう流れも目立ってくるのかもしれません。




もちろん、単純に遊ぶだけでオーケー!

カンファレンスで語られたトピックを中心にご紹介したため、少し硬い雰囲気の記事になりましたが、実際の「シュピール」は、細かいことを抜きにただただ楽しい時間が過ごせる場所であり、イベントです。
最新のボードゲーム、カードゲームに触れもよし、フードコートでドイツのホットドッグを食べるもよし、ちょっと変わったお土産を探すもよし、ボードゲームを好きな方はもちろんのこと、そうでない方も楽しい時間を過ごせるはずです。




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ゴムチューブの力を使ったトランポリンにも挑戦。結構怖い。





会場でのデモプレイでは、いろいろな国の人と一緒に遊ぶことになることも多く、それがまた新鮮だったりもします。
私は、日本の「百人一首」を有名な小説のフレーズなどから引用した形に読み札と取り札を置き換えたアレンジ版を、ドイツの方と楽しみました。畳(ござ)を敷いたテーブルで遊ぶカルタは、なかなかに新鮮でした。




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英語で読まれるから、取るのは大変です。





最後に、会場の雰囲気をもう少しダイレクトにお伝えできればと、動画をアップいたしましたので、それをご紹介して終わりたいと思います!
では!








復活の「手番ですよ。」は、後編に続きます!
実際にいろいろなデザイナーに会うことができるのもシュピールの楽しみのひとつ、というわけで、ある有名デザイナーへのスペシャルインタビューをお送りしたいと思います。
お楽しみに!



【第51回〜第75回の最新記事】
posted by タナカマコト at 09:38| Comment(0) | 第51回〜第75回
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