手番ですよ。

2013年05月24日

第37回「『テレストレーション日本語版』のできるまで(後編)」

さて、前回の「前編」に引き続いて、今回の「手番ですよ。」は「『テレストレーション日本語版』のできるまで(後編)」をお送りいたします。
前編で、ついに契約を取り交わすところまで来た「テレストレーション日本語版」、アメリカから契約書がメールで届くところから後編ははじまります。




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今回は後編です!





契約書にサインするまで

条件の折り合いが付き、ゴーサインを出してからまもなく、担当エージェントのリチャードを通じ・・・ではなく、メーカーのUSAoplyの担当弁護士から契約書が届くことになります。
しかも、A4で数ページにもわたっていくつもの契約条項について述べられています。
これには正直、少し驚かされました。
これまでもいくつかの契約を交わしたことはあるものの、契約書はせいぜい1ページか2ページ、契約の内容が簡単なものであればメール本文のなかでのやりとりのみ、ということもあり、数ページにもわたってということははじめてだったのです。
加えて、その内容の細かさ。
販売個数や、発売時期、パッケージの表記と言った一般的なことはもちろんのこと、宣伝に関すること、デジタルゲーム製作の権利や、発売後の売り上げ報告といったことが事細かに述べられていました。
また、もし、契約条項に重大な違反があった場合、「カリフォルニア州立裁判所で州の法律に従って裁判となります」というような、ドラマでしか観たことないような、そしてちょっとびびってしまうようなこともことも書かれていました。

と、契約内容について、ここでは簡単にまとめていますが、実はこの内容を把握するまでも一苦労がありました。
契約書だけにやや記述が難しく、英語が苦手な私でも一見して難解な内容だということがわかりました。
普通のメールであれば、おおよその内容さえ把握できればいいですが、契約書とあっては、そうはいきません。
中途半端な解釈でいたばかりに、大きな問題に繋がらないとも言えないわけです。
契約関係、それも海外との契約関係に強い法律家の方に相談することも考えましたが、それなりの報酬、相談費用が必要となることは簡単に想像つきます。うちの規模ではおそらく厳しいはずです。
私は、アメリカ在住のアメリカ人の友人に相談することにしました。それにより8割ほどの内容を把握することができたのですが、残り2割については、専門的な内容だったようで、その友人も「専門的な部分だけはわからない」とのこと。
私は、エージェントのリチャードにこのやりとりを詳細に伝え、残り2割の内容については、とにかく細かいところまで丁寧に教えてほしいとお願いしたのです。
リチャードが非常に協力的なのは前編でも書いた通りですが、ここでもリチャードは、私に丁寧に教えてくれました。
こうして、すべての条件について理解をすることができ、無事、契約書へサインすることとなったわけです。

ちなみに、「テレストレーション」は、世界20ヵ国で発売中、発売予定となっている人気タイトルなのですが、ほかの国での契約は、包括的な「ライセンス契約」となっています。これはどういうことかと言うと、単純に「テレストレーション」を売るだけでなく、簡単に言うとその国でさまざまな展開が出来るということを意味します。(それがどういったこと、どれくらいの範囲においてかは、契約ごとに違うわけで、ここで細かく説明はできません)
もちろん、それだけの契約となるとそれにまつわる金額も大きなものとなります。そして、それは大本のメーカーにとっても、とても重要で意味のあることなのです。
しかし、日本語版に関しては、製作と販売に絞られた契約になっています。リチャードから細かく聞いたわけではありませんが、これもまた「テレストレーション」の日本語版を発売するためのコスト削減案だったのではないかと思うのです。




いよいよ日本語版のデータ製作開始!

さて、無事に契約は済んだわけですが、まだ安心はできません。
日本語版の製作はまだ始まってもいないのです。そう、ここからが本番です。

日本語版製作にあたって、私が特に意識したのは一点「お題カードはすべて差し替え」です。
輸入版を訳語のシール付きで販売してほぼ一年。この一年の間にも多くの方に手に取っていただきました。
中には、かなりの回数を遊び、お題に新鮮さがなくなったという方もいるらしいのです。
「テレストレーション」に収録されたお題は約1800。この数は決して少なくない数ではありますが、回数遊べばどうしても同じお題に当たってしまうこともあるでしょう。
私は、「テレストレーション日本語版」を、そういった「テレストレーション」を愛してやまないファン中のファンと言えるような方々にも、ぜひ、新鮮な気持ちで遊んでほしいと考えていました。そのためには、「訳語はすべて差し替えしよう」と思い立ったのです。
実際に製作がはじまると、かなり困難なことがすぐにわかりました。ただ単に思いついた単語を列挙していけばいいというわけではありません。
「テレストレーション日本語版」にふさわしいお題というものは、ひとつひとつを考えながら、選んでいかなければならないものだったからです。
そして、以下のようなことを考えながら、私は訳語を製作していくことになりました。


1. 輸入版に添付していた訳語シールとかぶらない
2. 老若男女、できるだけ多くの方がすぐにイメージできる言葉にする
3. カードごとの難易度のばらつきを少なくする
4. スラングや差別的な言葉、表現を含まない


「1. 輸入版に添付していた訳語シールとかぶらない」については、私にとって、もっとも大きな前提事項だったのですが、いわゆる「いいお題」というものは、やはりどうしてもあり、また、「定番」とも言えるお題は、なかなか外せません。例えば、動物の名前ひとつとっても、あまり奇をてらったものばかりというわけにはいかないわけです。
私は、非常に悩みました。しかし、なによりも優先すべきはゲームとしての完成度の高さだと考え、輸入版にあった「いいお題」、ワードゲームとしての「定番お題」については、ある程度残すことを選択したのです。割合にして2割というところでしょうか。
「2.」、「3.」、「4.」については、とにかく言葉を思いついては書き出していき、それをカードに流し込み、バランスを取っていくということの繰り返しでした。
対象年齢は14歳以上となっている「テレストレーション」ですが、子供と遊ぶケースもそれなりに想定しなければなりません。そのため、一枚のカードに必ず一つは小学生程度であれば間違いなくわかるであろう言葉を含めました。こうすることで遊ぶときに「わかる言葉でいいよ」と言えるからです。
「テレストレーション」のカードごとのバランスを考える時に、カードに描かれたキャラクターについても含めて考えなければなりません。「テレストレーション」のルールには、「カードにキャラクターの絵が描かれている場合は、サイコロの目に関係なく、そのカードの中から好きなお題を選べます」というものがあり、キャラクターの絵が描かれているカードのお題の中に極端に簡単なお題が入っていた場合、そればかりが選ばれ兼ねないからです。「テレストレーション」を何度も遊んだことがある方なら、簡単なお題を伝えることが「テレストレーション」の面白さでないのはよくおわかりだと思うのですが、はじめてプレイする方はそうではないでしょう。初めてプレイする方にも難しめのお題をイラストで表現するということの面白さをわかってもらいたかったため、キャラクターのイラストが描かれたカードについては、通常のカードよりも一歩踏み込んだ判断が必要となったのです。
「4.スラングや差別的な言葉、表現を含まない」については、メーカーからの要望でもありました。やはり、ゲームである以上、すべての人が楽しめるものでなければならないのです。
そのほか、製作時期が夏だったため、思いつく単語は夏のものに偏りやすく、季節や地方に関することはできるだけ満遍なくなるように意識する必要があったりもしました。
また、採用すべきかどうか迷った時は、実際に自分でイラストを描くとしたらどのように描くのか、また、その表現はどのくらいの幅の広さを持ち得るのかを具体的にイメージしたりもしました。
結果、お題についての製作期間は、約二〜三週間というところ。仕事が終わって、帰宅してからPCに向かっては言葉を書き出し、選び、カードに流し込み、イメージしての毎日となりました。
こうして、「テレストレーション日本語版」のカードは出来上がったのです。




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何度見たかわからないカード一覧



もちろん、カードだけでは「テレストレーション日本語版」は出来上がりません。
カード製作と平行して箱や説明書の製作も進められました。
ロゴは、いつもテンデイズゲームズのグラフィック関係をやってもらっているイラストレーターの森木ノ子さんにお願いし、説明書は本文を和訳した後、デザイナーのみなまるこさんにお願いし、それぞれの作業にあたってもらいました。
細かい修正が幾度もあったのですが、お二人にはその都度すぐに修正してくれ、非常にスムーズに進みました。
また、森木ノ子さんは、箱の裏面に載せるプレイの例となるイラストを実際にイベントでプレイされたものを使うという形で、「テレストレーション」の面白さがうまく伝わるものを用意してくれました。このイラストが日本的なものに落ち着いたというのは、非常に大きいと思います。

そして、いよいよデータの完成です。
各種データ製作にかかった時間はおよそ二ヶ月。ひと夏をその製作に充てるという形になりました。
メーカーのデザイナーに渡し、最終的なチェックが行われ、いよいよ印刷です。
まず、色校用の見本が作られ問題がないことが確認されたら、あとは工場の方々に頑張ってもらうのみです。




完成!そして輸送

そして、一ヶ月半後、リチャードから完成の知らせが届きました。
とはいえ、すぐに日本に送られてくるわけではありません。

まずは、各国の基準に沿ってのさまざまな含有物質の検査です。
検査をどれだけ多岐にわたって行うかにより、その検査費用が変わってくるのですが、実は、日本では、子供を対象としたものでなければ特に大きな決まりはありません。しかし、アメリカの製品であること、ヨーロッパでも販売されるタイトルであることということもあり、アメリカとヨーロッパのそれぞれの基準に沿い、加えて、基本的なものを一通り検査するという形になりました。
もちろん、なにも問題が見つからず、検査は無事終了です。

次に、輸送の手配です。
あらかじめ、運輸会社とは打ち合わせをしていたのですが、今回は、数量が多いため、コンテナを手配しての輸送です。
製造が行われた中国での輸送作業は、私の及ばないところではあるのですが、あとから運輸会社の担当の方から聞いた話によると、非常に運がよかったようです。
コンテナの中が非常にきれいだったこと、コンテナに載せる作業が非常に丁寧だったため、到着した商品の状態が非常によかったのです。場合によっては、コンテナ内部があまりに汚く、それにより商品が汚損すること、積み方が適当だと、輸送時にコンテナの中で商品が崩れてしまい、破損となることなどがあるようなのです。




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中国から日本へと船で運ばれたコンテナは、その後、X線検査や書類との照らし合わせなどが行われ、税関を通過。
やっと日本国内の輸送網に乗ることになります。

あらかじめ契約していた倉庫に運び込まれ、商品の状態をチェックし、「テレストレーション日本語版」がついに完成となったのです。




販売開始!みなさん、ありがとうございます!

その後、11月に発売となった「テレストレーション日本語版」は、多くの方に遊んでいただけ、人気タイトルとなりつつあります。
本当にありがとうございます。
ぜひぜひ、これからもたくさん遊んでいただければと思います。

というわけで、駆け足で日本語版製作の裏側をご紹介させていただきました。
「テレストレーション日本語版」を遊ぶときにちょっと思い出してもらえれば、また少し違った面白さがあるかもしれません。




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posted by タナカマコト at 10:57| Comment(0) | 第26回〜第50回
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